
デニムスカートのまとめ
MSの証券構想は失敗に終わった。
二00九年一0月、S信託銀行と中央MT・ホールデイングスは二年四月に経営統合すると発表した。
持ち株会社の名称はMST・ホールデイングス。
S信託はS系、中央MはM系で、MS銀と親密な信託銀行だ。
しかし、両行とも厳密な意味では、MS銀グループではない。
MS銀は、三メガバンクの中で、これまた信託部門を持たなかった。
そこで両行にそれぞれ、経営統合を持ちかけた。
だが、MS銀の傘下に入りたくなかった両行は、信託同士の統合に踏み切ったのである。
MS信託銀行構想も頓挫した。
D証券、S信託、中央Mはいずれも、MS銀の体質を嫌い、独自路線を貫いた。
MSSの軍門に降るとどうなるか。
H相銀のその後が、それを如実に物語っている。
「毒を食らわば皿までも」の諺通り、S銀は丸ごとH相銀を呑み込んだ。
強力な解毒剤を連用したにもかかわらず、渋り腹のままだ。
H相銀を買収した後遺症を、S銀は今日まで、ずっと引きずっている。
K・前金融相の置き土産に六月末の株主総会は揺れた。
二0一0年三月期決算から有価証券報告書に年間一億円以上の報酬を得ている役員の名前と報酬額を開示しなければならなくなったからだ。
業績不振企業はもってのほかで、ライバルより高額の報酬を得ている経営者も、かもらいすぎ批判にさらされた。
高額報酬の開示について、経済界は「社会的な批判や、格差の感覚が出るのは好ましくない」(S・T証券取引所社長)などと、反発が強かった。
すにもかかわらず、K・前金融相が報酬開示制度を急いだ背景には、別の狙いが透けて見えた。
「MとS銀行を狙い撃ちした」という点で、金融関係者の見方は一致していた。
Mフィナンシヤルグループ(FG)では二00九年、巨額赤字の経営責任を不問にしたまま、持ち株会社の社長や傘下の銀行の頭取の、いわゆる不死鳥が、それぞれの組織の会長に就任。
経営トップが六人いるという異常事態を金融庁は問題視した。
S銀行は、金融庁がお膳立てした、A銀行との合併話を反古にして、金融庁の怒りを買った。
両行に共通しているのは、グローバル・インベストメントバンク(K銀行)を志向して、役員たちが高額報酬を手にしていたことだ。
Mでは、M・MFG会長、T・同社長、S・M銀行会長、N・同頭取、S・Mコーポレート銀行会長、SK・同頭取のトップ六人が揃って一億円以上の報酬を得ていた。
MFGは、0二年三月期の配当を一株あたり、年八円から六円に減らす予定だ。
0九年同期は年一0円配当だったから、二年連続しての減配である。
株主には減配を強いておきながら、役員たちは高禄を食んでいた。
もっと悪質なのはS銀行だ。
R・G取締役最高財務責任者(CF0)ら四人の外国人の執行役が一億円以上の報酬を得ていた。
二期連続で大赤字を計上し、配当はゼロ。
公的資金の返済もままならない。
業績不振やA銀行との合併破談の責任をとり退任したY会長兼社長の年間の報酬は八五0万円。
この格差には唖然とさせられる。
K金融担当相(当時)が、「二期連続の大幅赤字にもかかわらず、外資から派遣された経営陣は一億円以上のべらぼうの報酬を取っている」と噛みつくだけの理由は、たしかにあった。
業績をあげていれば、一億円プレーヤーが輩出しても、さほど問題にはならなかっただろう。
だが、業績は低迷、株価は低空飛行を続けているのに、役員報酬だけは海外並みでは、示しがつかない。
兜町の株の神様が怒ったわけではあるまいが、常識外の高額報酬と非難された企業の株価は、N自動車、Sをはじめ軒並み年初来の安値に沈んだ。
例えば、S銀行の七月一六日の安値は五九円。
MFGは七月二二日に一三五円という上場来の歴史的な安値をつけた。
一億円プレーヤーが多数出たことと株価の崩落は無関係ではない。
金融界で最多の七人の一億円プレーヤーを出したのはNホールディングス(HD)である。
W社長の役員報酬二億九九00万円は、金融界のトップだ。
同社は、二00八年秋にA銀行大手、R・Bの欧州部門を買収したのをきっかけに、グローバル・インベストメントを目指した。
海外で仕事をする旧・Rの社員らを含めた一五00人をグローバル社員と認定。
この社員を対象に、A銀行並みの成果主義の給与体系を導入した。
成果主義の拡大が役員報酬に反映されたのである。
NHDの二0一0年三月期の役員報酬の総額は、Mの三人の会長と、s銀の四人の外国人の執行役は一斉に退任に社長のWを含めた執行役一0人で一四億五一00万円。
平均で一億四五一0万円。
0九年三月期は執行役二0人で八億二九00万円。
平均で四一四五万円だったから一人当たり三・五倍に膨れ上がった計算になる。
しかし、同社の二0一0年三月期の配当は一株当たり年八円。
株価はリーマン・ショック前に比べて、四分の一に沈んだまま。
七月六日には、とうとう五00円の大台を割り込み四六八円の年初来の安値をつけた。
それなのに役員報酬だけは、グローバル企業並みに跳ね上がった。
金融業界の一億円プレーヤーの中で、NHD社長のWがトップになったのは、リーマンの強欲ぶりの部分、だけを都合よく模倣した成果にほかならない。
米国の投資銀行のビジネスモデルを、周囲遅れで真似しているようにも映る。
N・リーマン連合軍は生き残れるのだろうか。
NHDが、もう一枚の、大きな大きな再編カードであることがなくわかってもらえればそれで目的は達した。
最後に地方銀行について書く。
唯一、生き残った同族経営の地方銀行、S銀行から、社長のK(一億四一00万円)、副社長の0(一億一000万円)の兄弟が一億円プレーヤーとしてリストアップされた。
地方経済の疲弊ぶりについて績々述べるつもりはない。
読者は、それを肌で感じるようになっていると思う。
いまだに、オーバーバンキングの激戦地区といわれる静岡県(沼津市)にS銀行の本店はある。
郵政民営化に伴い発足した、U銀行と、住宅ローンで先頭を切って提携したのがS銀行だった。
二0一0年春には地銀の経営統合が相次いだ。
それでも、まだ、地方銀行、第二地方銀行は、あわせて一00行余ある。
オーバーバンキングは解消されていない。
S銀行・0一族はどこへ行くのだろうか。
地方銀行の合併・淘汰について書くには紙幅が尽きた。
地域金融機関(地銀、第二地銀&信用金庫)は『銀行消滅』の続篇のテーマの一つになるだろう。
ここでは、規制緩和の時代に淘汰され、消滅した銀行を通して、次の金融再編(私は金融再々編と認識している)を見据えた内容になっている。
一億円プレーヤーが続々誕生したことから、はっきり見えてくるのは金融再編の加速だ。
ストックオプション(自社株購入権)がもたらした役員報酬の高額化が、金融再編のアクセルの役割を果たす。
銀行のトップが、お手盛りで高額報酬を手にすると、株主もそれに見合った配当を、強く要求することになる。
株主は黙っていない。
こうした場面の手っ取り早い解決策は、規模の拡大と収益の向上という二兎を追うことだ。
高額報酬を手放したくない経営陣は目をつぶって、経営統合・合併へと突き進む。
役員報酬の高騰は、これからの金融再編を占ううえで、重要な要素となる。
二0一0年七月一四日夏中央省庁の総本山である震が関に衝撃が走った。
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